色素が付きやすいことで最も知られているのはコーヒーや紅茶、日本茶でしょう。
白いマグカップや湯のみを使ってコーヒーやお茶を飲んでいると、底に色がついてしまう茶渋は誰もが経験したことがあるかと思います。
私も歯科衛生士として歯医者で働いていてホワイトニング施術をした患者さんには必ず、コーヒーやお茶を飲むのは控えるように伝えています。
ここでは、コーヒーやお茶を飲んで歯に着色する理由と予防方法、着色の落とし方を解説していきます。
コーヒーやお茶が歯に着色する理由
1.エナメル質の傷に色素が入り込む
上記の図のように、歯冠部と呼ばれる歯肉から露出している部分の歯は、象牙質という黄色ぽい組織の上に、白く半透明のエナメル質という骨より硬い組織が覆っています。
毎日の食生活や酸化した歯垢(プラーク)によって脱灰(歯の表面が溶けること)したり、研磨剤入り歯磨き粉などの外的な刺激によって、エナメル質には目に見えない細かな傷ができてしまいます。
その傷の中に、コーヒーや紅茶に含まれている強い色素が入り込み、着色となって残ってしまうのです。
コーヒーやお茶を飲むコップに、着色や茶渋が残りますよね。それと同じ原理ですね。
2.歯の再石灰化(自己修復)の際に、色素成分タンニンが歯と結合する
上記のように歯には自己修復機能があり、脱灰したエナメル質を修復(再石灰化)させます。
歯のエナメル質の表面は、ペリクルと呼ばれる唾液で作られたタンパク質の膜で覆われています。
ペリクルは、エナメル質を保護する働きのほかに、再石灰化を行う際にたんぱく質・ミネラル成分を取り込みます。
コーヒーや紅茶に含まれる色素成分タンニン(ポリフェノールの一種)はタンパク質で出来ているため、再石灰化の時に、エナメル質のカルシウムと色素成分タンニンのイオン結合が起こり、エナメル質に取り込まれて着色となって沈着してしまいます。
3.歯の詰め物(充填物)の境目に着色成分が入り込む
歯科治療の現場において、コンポジットレジン充填(CR充填)という、歯と同じ白さの詰め物をする処置がしばしば行われます。
シェード(色合い)も多種類あり、個人の歯に合わせたシェードで詰めることができるため、前歯などでも見た目にも治療したことがほとんどわからないくらいです。
でも、この詰め物の弱点はそのマージン部(境目)の脆弱性です。
CR充填は、簡単に言うとレジンという粘土状の材料を接着剤で歯にくっ付けて固める治療なのですが、どうしても接着面や端の部分が経年劣化で薄くなって剥がれたり、浮き上がりが起こりやすいのです。
この詰め物が劣化した部分にコーヒーや紅茶などの色素成分タンニンが入り込んで沈着し、詰め物を縁取ったように着色してしまうことがあります。
最近のホワイトニング相談にくる患者さんにも、前歯などに黒っぽい線を引いたように着色している方も多く、CR充填の隙間に入り込んだ着色といえるでしょう。
コーヒーや紅茶などは毎日複数回習慣的に飲むケースが多いので、初めは薄い色ですが日を追うごとに充填物の中で重なり濃い色になっていきます。
コーヒーや紅茶の着色予防方法
ではコーヒーや紅茶による着色を予防する方法を紹介します。
飲んだらなるべく早くうがい
うがいは非常に単純な方法に思えますが、飲み物による歯の着色の予防には効果が高いです。
着色成分が強いコーヒーや紅茶、日本茶などを飲んだ時は、なるべくすぐにうがいをして着色成分を洗い流してしまいましょう。
消毒殺菌作用の高いリステリンやガムデンタルリンスなどのマウスウォッシュを使うとより高い予防効果が得られます。
ホワイトニング歯磨き粉を使う
うがいをしていても、日常的にコーヒーやお茶を飲んでいると、どうしても歯は少しずつ着色が起こってしまうものです。
市販のホワイトニング歯磨き粉は、エナメル質に沈着した色素を除去する効果がありますので、普段からホワイトニング歯磨き粉を使っておくことでコーヒーや紅茶の色素沈着は予防できます。
長い年月をかけて沈着してしまった黄ばみ・着色を落とす方法
既に色素が長い年月をかけて沈着してしまった場合の着色(ステイン)を落とすホワイトニング方法としては、歯医者で行う方法と自宅で自分で行う方法の2パターンがあります。
1.歯医者で行う方法
PMTCクリーニング
PMTCとはProfessional Mechanical Tooth Cleaningの略で、歯科医や歯科衛生士が専用機械で歯面をクリーニングすることです。
歯磨きではなかなか落ちない歯垢や歯石を落とすことができ、ある程度は歯の着色・茶渋、タバコのヤニ黄ばみなども落とすことが出来ます。
歯医者によっては、フッ素塗布までおこなって、虫歯予防や着色予防の効果をしばらく持続させることもできます。
料金相場は、保険適用の場合で3,000円程度、保険適用外の自費の場合で5,000~20,000円程度です。
特に保険適用外の料金は歯科医院によってまちまちです。
保険適用の条件は、「虫歯や歯周病をわずらっていること」です。
それ以外の歯が健康な時にPMTCを受ける場合には自費となってしまいます。
漂白剤によるホワイトニング
歯科医の指導の元おこなわれるホワイトニングには2種類あります。
- 歯科医院で施術をするオフィスホワイトニング
- 自宅で自分で施術をするホームホワイトニング
それぞれ、過酸化水素、過酸化尿素という劇薬を使って歯の漂白をするため、生まれつきの歯以上の白さにすることも可能です。
審美治療のため保険適用外です。料金相場は効果が出るまで数回通院する前提で、オフィスホワイトニング3~10万、ホームホワイトニング2~10万円となります。
下記の記事でそれぞれ詳しくメリット・デメリットを解説しています。
⇒オフィスホワイトニングの相場料金と効果、メリット・デメリット
⇒ホームホワイトニングの相場料金と効果、メリット・デメリット
自宅で行う方法
歯の消しゴムを使う
歯の消しゴムという商品が500円程度で市販されていて、ドラッグストアやAmazonなどで購入することが出来ます。
研磨剤入りシリコンゴムで歯の表面をこすって着色を削り取る商品です。
下記の記事でも解説しているように、研磨剤で歯のエナメル質を削ると、虫歯になりやすくなったり、さらに着色しやすい歯になるのでオススメは出来ない方法です。
⇒歯の消しゴムを使ったホワイトニングの効果とメリット、デメリット
歯のマニキュアで一時的に着色を隠す
コーヒーや紅茶などの歯の黄ばみがひどいのに、結婚式やプレゼンなど大事なイベントがある!
そんな時に使えるのが、歯のマニキュアです。
爪のマニキュアと同じように、白い液剤を歯の歯面に塗って付着させることで、1日から数日間だけ歯を白くする(着色を隠す)ことが可能です。
根本的な着色の解消にはなりませんが、緊急時に一時的に黄ばみを隠したいときにはいいでしょう。
ホワイトニング歯磨き粉を使う
歯のホワイトニング歯磨き粉やジェルは数多く市販されていますが、中には着色除去の効果が高く歯を白くする効果のあるものも販売されています。
エナメル質に着色した色素を、浮き上がらせて除去する成分が配合されていて毎日使用することで少しずつ色素沈着が除去されていきます。
さらに、薬用成分が含まれているものや再石灰化を促す成分が含まれているものを選べば、虫歯や着色しにくい歯になっていき、歯茎もピンク色に健康になっていきます。
即効性が無いのがデメリットですが、自宅で手軽に少しずつ歯を白く戻していくことが出来るのでおすすめです。
下記の記事で効果の高いオススメのホワイトニング歯磨き粉を紹介していますので参考にしてみてください。