歯医者や美容サロンでのホワイトニングは「歯の漂白」と表現されることもある施術です。
薬事法では劇物指定をされている薬剤を歯に浸透させて、化学反応を起こすことで白く見せる技術ですが歯にこのような処理をして悪影響はないのでしょうか。
歯科衛生士として働く観点から、ぶっちゃけてみようと思います。
歯医者でのホワイトニングに使われる薬剤について
歯はもともと薄い黄色っぽい色をしています。これは歯の構造に関係しています。
歯冠部(歯肉から上に露出している部分)は表面をエナメル質という半透明な白い組織でおおわれていて、その内側には象牙質というやや柔らかい黄色っぽい組織があります。
生まれつきの歯の黄色っぽい色はこの象牙質の色がすけて見えているものです。
象牙質の厚みやもともとの色合いによって歯の色は決まりますので、生まれつきの歯の色には個人差があるのです。
ホワイトニングは、そんな歯に下記のような薬剤を塗って歯の表面だけでなく内部を漂白していきます。
過酸化水素
ホワイトニング剤で最も使用されている成分です。
3~5%程度の低濃度のものはケガの消毒や食品の漂白などに使われています。
髪の毛の脱色をするブリーチ剤には3〜6%程度の濃度が使用されています。
歯医者のオフィスホワイトニングでは30~35%の高濃度のものを使用します。
高濃度の過酸化水素ですので日本の薬事法では劇物指定なので一般に購入することはできません。
即効性はあるものの、痛みなどの影響が出やすいといわれています。
過酸化尿素
歯医者の指導・監督のもと、自宅で自分でホワイトニング施術をするホームホワイトニングに使われている主な成分です。
時間が経つと過酸化水素と尿素に分解されるので比較的ゆっくりと歯に作用します。
分解してできた過酸化水素は3~9%とオフィスホワイトニングと比較すると低濃度になるので漂白効果は劣りますが、ホワイトニング特有の痛みが出にくいというメリットもあります。
酸化チタン、窒素など
オフィスホワイトニングでは過酸化水素を歯に塗布して、青い光で加熱することで化学反応を起こして漂白しますが、光による加熱反応を促すための成分として酸化チタンや窒素が配合されていることがあります。
光(LEDやレーザー)
薬剤ではありませんが、薬剤の反応を促進するためにLEDやレーザー、紫外線などを照射して歯を白くしていく治療もあります。
一般的には治療時に歯の表面に熱が発生します。
参考:歯のレーザーホワイトニングを徹底解説!相場料金と効果、メリット・デメリット
ホワイトニングの危険性や悪影響、安全性について
ホワイトニング剤の中で最も取扱いに気を付けなければいけない成分は、過酸化水素でしょう。
過酸化水素は薬事法で劇物扱いされているほど、体への刺激が強い物質ですので、少なからず影響があると考えられています。
虫歯になりやすくなる。着色しやすくなる
ホワイトニングは過酸化水素の働きで一時的に歯の表面にある被膜とカルシウム成分が失われ、歯の表面がわずかに溶かされた脱灰に近い状態になります。
一般的に歯は再石灰化という自己修復が行われますが、再石灰化が完了するまでは何も保護ざれていないむき出しの状態と考えるといいでしょう。
したがってホワイトニング後は色素成分も沈着しやすく、虫歯になりやすくなるといえます。
ホワイトニング処理後に、歯の再石灰化を促すホワイトニング歯磨き剤を使用することで、着色や虫歯を防ぐことが可能です。
歯へのダメージ
そもそもホワイトニングは、日常生活では存在しない高濃度の過酸化水素を歯の表面に強引に作用させるので、まったくダメージがないとは言えません。
わかりやすくいえば、髪を脱色するブリーチ。
髪のブリーチ剤には過酸化水素(オキシドール)が含まれていますが、ブリーチ後の髪はダメージを受けてバリバリになりますね。
3~6%程度の濃度のブリーチ剤ですら、↑の写真のように非常に硬い髪の毛にダメージが残ってしまうということです。
30~35%の濃度のホワイトニングでは少なからず歯にダメージを与えているのは否めません。
歯肉や歯茎への影響
ホワイトニングに使用される高濃度の過酸化水素が歯茎や歯肉に付着すると、白く変色して激しい痛みが起こります。
これはカタラーゼ反応とよばれる現象です。
体内にはもともとカタラーゼという過酸化水素を分解する酵素が存在していて、付着した部位で急激に作用することによります。
この反応は、オキシドールをケガの部位に使用した際に出る泡にも関係しています。
過酸化水素にカタラーゼが反応すると、酸素と水に分解しますがこのときに発生する酸素によって泡が出るのです。
中には生まれつきカタラーゼを持たない無カタラーゼ症の人もいて、ホワイトニングをしてはいけない絶対的禁忌症として注意する必要があります。
過敏症の危険性
ホワイトニングをする際に使用する薬剤や機器に対して過敏な反応をする場合には使用できないことがあります。
一つは前述した「無カタラーゼ症」。もう一つは「光過敏症」の人は注意が必要です。
光過敏症の人は、光を使わないホームホワイトニングやホワイトニング歯磨き剤をおすすめします。
また、知覚過敏など歯がしみやすい人や歯にクラック(ヒビ)や虫歯、あるいは虫歯の治療をしてある人は、しみたり痛みがでるなどの症状が強く起こることがありますので医師と相談することが大切です。
歯のエナメル質は、骨より硬く体の中で最も硬い組織だと言われています。
そこに作用させるホワイトニング剤は、高濃度で刺激の強い薬品を使わなければ効果も出にくいのはやむを得ないともいえるでしょう。
過酸化水素についてはホワイトニング大国といわれるアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を受けていますので、安全性の確認はされています。
ただし効果や症状の程度は個人差がありますので、カウンセリングの際にしっかりと説明を受けて状態を見ながら行い、術後のメンテナンスやケア方法などもアドバイスを受けることが大切です。
髪の毛と違って生え変わりがきかない一生モノの歯ですので、歯医者や美容サロンのホワイトニングはよくよく考えてから行うようにしましょう。